NFCアンテナ設計・共振調整・解析&センサ搭載無線モジュール開発
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NFC・RFIDタグや非接触ICカードの共振周波数の測定方法として、表1の1~4に示す計測器・装置を用いた方法があります。
ここでは、ネットワークアナライザを用いて測定環境を構築した例をご紹介します。
次の3つの項目について、それぞれの影響を調べ、測定環境構築の指針を検討します。
(1)センスコイルとタグアンテナそれぞれのサイズと巻数
(2)センスコイルとタグアンテナの間隔
(3)周辺金属
【今回使用した装置】
ネットワークアナライザ: DG8SAQ VNWA3E 英国SDR-Kits社製
<参考情報>
・トラ技2015年4月号
・穂高電子株式会社から購入
【センスコイル、タグアンテナ】
センスコイルとタグアンテナは、平面コイル状のパターン基板を使用(写真1)
・72mm×42mm
・40mm×30mm
・24mm×18mm
・18mm×14mm
(株式会社ケイ・オール作製)
ここで使用したセンスコイルとタグアンテナは、平面コイル状のパターン基板で作製した同形状のものです。
◇ネットアナに接続したパターン基板を”センスコイル”
◇タグLSIまたはその等価回路に接続したものを”タグアンテナ”
と呼んでいます。
【タグ】
各社製品のNFCタグLSIの影響があるかもわかりませんので、測定には模擬タグを使用しました。
模擬タグとは、図1に示すNFCタグの等価回路を個別素子で構成したものです。
【構成】
図2に、ネットワークアナライザVNWA3Eを用いた共振周波数の測定装置を示します。ネットワークアナライザVNWA3Eにケーブル(RG223-SMA)を接続し、ケーブルのもう一方にセンスコイルを接続します。
図2のようなタグアンテナがない状態で、S11を測定し、図3のように測定周波数付近で、ほぼフラットであることを確認します。
(例えば 確認する周波数範囲:5MHz~25MHz)
【測定方法】
(1)測定周波数を設定:12.5MHz~14.5MHz(参考)
(2)図4のように、センスコイルの中心軸上にタグアンテナの中心を合わせて配置します(厳密に中心を合わせる必要はなく、だいたいでOK)。
タグアンテナをセンスコイル上 d[mm]の間隔にセットし、S11の最小点における周波数を測定します。この周波数が共振周波数となります。(図5参照)
タグアンテナ72mm×42mmと同じサイズの
センスコイル72mm×42mmの巻数の影響を調べました。
図6に、
センスコイル72mm×42mmの巻数(N=1、N=3)を用いて
タグアンテナ72mm×42mm N=3の共振周波数を測定した結果を示します。
センスコイルとタグアンテナの間隔が小さくなるにしたがい、共振周波数が高い方向に変化しました。
◇4-28mm未満では、 N=3の変化5.52%、N=1の変化2.89% であり、N=3の方が大きく変化
◇28-40mm未満では、N=3とN=1の差はなく、ともに約2%変化
◇40mm以上で、ほぼ一定
図7に、
センスコイル72mm×42mm、N=3を用いて
タグアンテナ72mm×42mm N=3とN=1の共振周波数を測定した結果、
図8に、
センスコイル72mm×42mm、N=1を用いて
タグアンテナ72mm×42mm N=3とN=1の共振周波数を測定した結果を示します。
タグアンテナの巻数がN=1とN=3で測定値がほぼ等しくなる間隔28-48mmの共振周波数の変化は、
センスコイルN=3(図7):0.30%
センスコイルN=1(図8):0.16%
であり、センスコイルの巻数は、少ない方が共振周波数の測定値に与える影響が小さいことがわかります。
タグアンテナ72mm×42mm より小さいサイズの
センスコイル24mm×18mm の巻数の影響を調べました。
図9に、
センスコイル24mm×18mm の巻数(N=3, N=5, N=4+3=7)を用いて
タグアンテナ72mm×42mm N=3の共振周波数を測定した結果を示します。
◇4-46mmにおいて、センスコイルの巻数を変えて測定した結果、共振周波数(測定値)の大きな差なし
◇25-46mmでは、共振周波数の測定値の変化は0.05%であり、ほぼ一定
図10に、
センスコイル24mm×18mm の巻数(N=3, N=5, N=4+3=7)を用いて
タグアンテナ24mm×18mm N=3の共振周波数を測定した結果を示します。
◇8-25mmにおいて、センスコイル巻線による共振周波数の大きな差なし
◇20-25mmでは、共振周波数の測定値の変化は、約0.06%であり、ほぼ一定
図9、図10より、センスコイルがタグアンテナと同じサイズのとき、間隔の影響を大きく受けます。
タグアンテナ72mm×42mm より小さいサイズの
センスコイル72mm×42mm N=1に対して、4種類のタグアンテナのサイズの影響を調べました。
図11に、
センスコイル72mm×42mmの巻数(N=1)を用いて
タグアンテナ
・72mm×42mm N=3
・40mm×30mm N=3
・24mm×18mm N=3
・18mm×14mm N=3
の共振周波数を測定した結果を示します。
センスコイルとタグアンテナの間隔が短くなるにしたがい、
◇サイズが大きい方が共振周波数の変化が大きい
◇30mm以上では、サイズによる差なし
◇サイズによって、ほぼ一定となる間隔が異なる
⇒図12参照
図12に、間隔48mmで測定した共振周波数に対して誤差が約1%になる間隔と、タグアンテナの各サイズの関係を示します。
タグアンテナサイズが小さいほど、小さい間隔で共振周波数の誤差が大きくなっていました。
コメント:
タグアンテナのサイズにかかわらず間隔を大きくしたいところですが、小さいタグアンテナでは、間隔を大きくすると
図13(a)のように、S11の凹みが小さくまたノイズが大きくなるので、サイズごとに間隔を設定した方が良いと思います。
共振周波数の測定に及ぼす周辺金属の影響を調べました。
図14に、センスコイルの下側に銅箔を置いて共振周波数を測定したときのイメージ図を示します。
銅箔 : T-160C(サンハヤト(株))
タグアンテナ:72mm×42mm N=3
センスコイル:72mm×42mm N=1
図15に、センスコイルの下側に銅箔またはスチール机がある状態で、
センスコイル72mm×42mm N=1を用いて
タグアンテナ72mm×42mm N=3の共振周波数を測定した結果を示します。
センスコイルとの距離を、銅箔では65mm以上、スチール机では60mm以上にした場合、共振周波数の測定値が変化せず一定になりました。
実験方法で示した装置やセンスコイル、タグアンテナを用いて
共振周波数を測定した場合の測定環境構築指針を次に記します。
< センスコイルとタグアンテナ >
(1)センスコイルの巻数を少なくする(例:N=1)
(2)センスコイルのサイズは、測定対象のタグアンテナサイズと異なる方が望ましい
(3)タグアンテナとセンスコイルの間隔は、図12のような測定を行い、測定対象のタグアンテナサイズに適した間隔で測定する
< 周辺金属 >
(4)スチール机や金属製実験机など周辺金属の影響を受けやすいので、周辺に金属がないところで測定を行う
(5)周辺に金属がある場合は、センスコイルとの距離を十分にとる
(6)その距離は、周辺環境によるので、今回のような測定を行い、確認するのがよい
<コメント>
ネットワークアナライザの機種によって出力レベルが異なり、またNFC・RFIDタグLSIの消費電力によってS11の周波数特性に
ノイズが乗りやすくなることがあると考えられますので、使用する計測器・装置と測定対象のタグLSIに対して測定条件を求めておくのが良いと思います。
2016.03.19
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